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新しい年に新しいもの

年末にお風呂の神様を新しい浴室に移し、二ヶ月ぶりに家のお風呂に入ることができた。

浴槽は直炊きの鋳物のお風呂。薪のお風呂はからだの芯まで暖まる。でも手間がかかるため、薪のお風呂をガスや灯油に作り替える事は有っても、新たに薪の直炊きの風呂を作るのは珍しいらしい。炉を作れる職人もほとんど居ないらしく、また燃えやすい炉を作るのも難しいらしい。そこで、大和重工の直焚鋳物ホーロー浴槽直焚築炉ユニットというものを設置する事にした。雲さんは持って帰った廃材がどんどん片付くので、いそいそと風呂炊きに精を出している。よって私の出番は無く、今年も又火の扱いは上達しそうに無い。

去年の10月からべったりこのことに掛かりっきりになる。途中から任せておけるはずの事が任せておけないはめとなり、にわかに現場監督兼お茶だし係となる。ほとんど糸紡ぎも織も触ることも出来ず。(どのみち機も糸車も移動した荷物に埋もれていて動かせなかったんだが)

檜の在庫が安く手に入ったので無理を言って壁と天井に貼ってもらった。(本当は青森ヒバにしたかったが)浴槽は濃い青。前のホウロウ引きの鋳物のお風呂は、私が来た当初から錆びていて、薄緑のホウロウは獣が爪で引っ掻いた様な無惨な姿だった。模様をすっかり覚えてしまった私は、濃い青なら少々錆びが出たところでその模様を覚えずに済むだろうと決めた。前回同様、30年くらいは保ってもらわねば。タイルは乳白色の小さいモザイクタイルにした。木との出会いがちょっと懐かしくて暖かいお風呂になった。小さいタイルは懐かしい銭湯を思い出す。最近ちいさなモザイクタイルが再び人気のようで、様々な種類のサンプルをみて迷いに迷ったあげくシンプルなこの色に落ち着いた。青森のヒバの板を蓋に選んだのは良かったが、生木でオイル成分が多いせいか,白いタイルが蒸し出された樹液で黄ばみそうになる。タイルに触れる一枚を慌てて取り除く。

煙突が窓を横切り視野を遮る事とか、熱さの事で悩んだ物の結局さほど問題ではなかった。木のお風呂は手入れが大変だと聞くのでその事も心配だったが、石けんをまき散らしたり換気を怠ったりしなければあまり問題は無いように思える。浴室が湯気でいっぱいになっても、その湯気が冷えても、合成樹脂やモルタルのように壁を伝い落ちる水滴は木の壁にはほとんど見られない。木は湿度に応じて吸い込んだり吐き出したりをしているのだろう。年数が立つと檜は黒ずんで来て美しく無いと聞く、いよいよ居心地が悪くなったら木を張り替えれば良い。取り外した木は燃料になる。

風呂場の横に増築した手織機を置く部屋と、脱衣の床には青森ヒバの板を張り、年が変わってからようやくオイルを塗ることができた。オイルにはリボス社のメルドスハードオイルを使った。天井の高さに制限が有り、地面から30cmほどしか上げる事が出来なかったので、土壇場で青森ヒバを貼る事にした。青森ヒバはカビやシロアリに強く、床下の”つか”に昔からヒバが使われていたらしい。家の中で一番低いこの場所に一番ハイカロリーのストーブを置いてみた。廊下を伝い家中が暖かくなればいいのだが。

「20年持てば良い」と雲さんが言う。大事に使えばもっと大丈夫。20年,私たちは70歳。そろそろ、次の代に引き継ぐ頃になるのだろうか。それまで、この部屋は機織部屋として大事に使わせて頂きます。