すぐき


京都の漬け物屋さんですぐきを買う。おばさんが樽の中から良さげな物を出してくれた。葉も茎も小さく刻んだ物が売られているが、たくあんのように薄く切って食べるのが良いよ、葉と茎は小さく刻んでね。残りは同じように切って小分けにして冷凍しておくと良いと教えてくれた。

長い葉がくるくると上手にまとめられていて、しゅっとつぼんだかたちが美しい。この根っこのかたちを見ると昔から、いろいろな物を連想する。昔出会ったことがある器用な表具師の爪のかたち。この人の親指の爪はこのかたちをした他の指とちがって横に広くたてが異様に短かかった。もう一人同じ様な爪を持った器用な下絵職人さんの事を思い出した。それから、花びらのかたちにも似ている。先が微妙にとがるでも無く丸くでも無くしゅっと終わる。このかたちが描けなくて何度練習した事か。そして、糸紡ぎのカブラ玉のかたち、小さい根っこがだんだんと太って行く、紡がれた糸が順序良く巻かれて行く、きれいに巻かれた糸玉は崩れずに後の作業もしやすくなる。理にかなったかたち。

よく漬かったすぐきの肌はぱりっとしてしんなりとして、程よく入ったしわも美しい。
思わず顔を近づけて香りを嗅ぐ。ふわっと良い香りがした。