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かわいそう?

もう直ぐ母の七回忌がやってくる。
公民館長を引き受けた2015年。そろそろ母の介護が本格的になることが心配だったけれど、1~2年で交代できるだろうと思っていたが今もまだ続けている。

2016年4月、、もうこの頃はほとんど歩けなくなり、ベット横のポータブルトイレで用を足すのが精一杯になっていた。この年のひな祭りに母のベッドのそばに、父が飾ってくれた雛飾り。そんな父も、今はもういない。

——2016年4月13日——

 近くの医院に、定期診察を受けに行った。病院の待合室で、車椅子の母と一緒に会計ができるのを待っていた。母は今自分がどこにいて、何のために病院に来ているのかもう良く分からなくなっているのだけれど、人の顔と名前や昔の記憶を驚くほど鮮明に覚えていたりする。耳が聞こえにくく自然と声が大きくなるので、弱ったなと思っていたけれど、近頃は何はばかることなく母に聞こえるように私も大きな声で話すことにしている。小さな町の小さな診療所の待合室だから私たちが誰なのかすぐにわかる。私たちの会話を聞いていたのか、母と同じくらいの歳の頃の男性が帰り際、車椅子の母の背中を見ながら私に「何歳になっただ?」と聞いてきた。85歳ですと答えると。男性は「まだ85歳なのになあ。かわいそうに。。」とおっしゃる。そして靴を履きながら「わしは何歳になったかなぁ。。。」と独り言のように言いながら帰って行った。

男性が出て行った後、母は宙を見つめながら独り言のように話し始めた。

「いろんなことがなぁ、わからんようになるけど仕方ないが。。。それはそれで、なるようにしかならんし、、、しかたがないが。」そんな風な言葉を、どこか遠くを見つめながらつぶやいた。母は全て理解していた。

自分のいろいろなことが変わっていって、それを受け入れられない頃があり、怒ったり泣いたりしてた。でもそれも過ぎて、いろいろなことを諦めたり受け入れたり、心にしまったり、すっかり忘れてしまったり。

それはそれで穏やかに今を生きている。

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