Press "Enter" to skip to content

楞厳寺の大銀杏

楞厳寺の石段を上がるとすぐにそびえ立つ大銀杏は、毎年、小さいけれどもちもちとした食感の、美味しい実をつけます。5月には小さな葉っぱを芽吹き、その葉のあとから雌花がたくさん伸び始めます。6月になると雌花の実は1cmほどに成長しますが、幾らかは未熟な青い実のま落ちてしまいます。これは植物の「自然の摘果」と言われています。
果実がどんどん成長するこの時期に、なかなか梅雨入りしなかった今年、ほぼ全ての青い実が一度に落ちてしまいました。集めるとコンテナ20杯以上になりました。これは例年の熟した果実の収穫量とほぼ同じ量です。梅雨入りが、昨年より一月近くも遅れたための水不足と、気温の高さが原因だったと思われます。

「大雨、線状降水帯、異常気象、猛暑」などの報道に、私たちもすっかり慣れてしまいましたが、間違いなく地球の環境にじわじわと悪影響が進んでいます。人間にとっては「少し」であっても、同じ場所で生きる、逃げ場のない植物の受けるストレスは甚大です。猛暑が長く続いた今年、山の実りはどうだろうか、鹿や熊の餌が今年も少ないのではないかと心配した夏でした。

ほとんど未熟のまま落果してしまった銀杏ですが、11月になり風が吹くたびいくつか落ちています。ところが、多くの実は白い種だけになり、庭の苔の上に散らばっているのです。毎年、狸やイタチなどの小動物が銀杏を食べに来るのですが、丸呑みするらしく種だけ残すことはありません。こんなに綺麗に、不要な部分を残し「ごちそうさま」をする者は誰なのだろう。。近ごろ鹿公園のようになっている境内、食べ方からして鹿の仕業に違いありません。ともあれ銀杏の始末でいちばん面倒な、熟した果肉を取り除く作業を終わらせてくれたことに感謝しつつ、火鋏でその白い実を拾い集め、きれいに洗い笊に干します。こんなふうに、山の者たちとうまく共存できれば良いのにと、ふと想いました。

今年の銀杏の黄葉は、遅いそうです。
12月、「楞厳寺の銀杏の葉が全て落ちると雪が来る」と言われています。
                                      雲

Be First to Comment

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です